Mさんのgg。2日目は色の遠近法を意識して進めることにしました。長野市内からは遠くの山々がよく見えますが、その景色を観察すると、遠くの山は手前の山より薄く見えます。近くになるにつれ段々と色も濃く鮮やかに見えてきますね。こういった彩度の話や明度の話を織り交ぜながら制作を進めました。
3日目にはいよいよポロックの模写を。けれどポロックの場合、模写をするというのもそもそも難しい話。ですが色は近づけることはできるので、色作りからスタートすることにしました。これが案外Mさんにとっては新鮮だった様子。普段絵の具のチューブからそのまま出す色を使うことが多いMさんにとって、「色を模写する」ということは初めてだったのかもしれません。ポロックの作品を見ながら「この色はどんな色で構成されているのか」を分析することは、難しくもありながら、発見の多い時間のようでした。一口に黒と言っても、赤みの強い黒もあれば、青みの強い黒もあり、灰色といっても、黄色やオレンジを使いながらグレーにすると、温かみのある灰色ができ、青や紫を使ったグレーは、クールな感触があります。この時この色を、このぐらいの割合で混ぜると、こんな色になりますよと、実際混色して色を作りながら、講座を進めていきました。Mさんも時折「へー」と感心されながらご自分でも調色にトライ。
最終日は全3回に分けて描いた画面を並べてみました。自由に描いた1日目。色の遠近を意識した2日目。ポロックの色を調色しながら描いた3日目の作品群を机に並べ、今回のポロック回を振り返りました。抽象画は一見誰にでも描けそうに見えます。実際、誰もが抽象画を描くことは全く可能です!けれど、こうして一人の作家の作品を模写することで、今まで気なしに見ていた中に「絵の構造」が浮かび上がってきたと思います。画面への配色、色の調合、絵の具の濃度や粘度の調整や描くストロークの強弱などなど。作品制作の過程ではまだまだほんの一握りではありますが、今回ポロック作品から、とても多くの技術を知ることができました。絵に感性は大切な要素ですが、感性だけに頼ることはできません。したいようにするために、こうして模写をしながら、それぞれの作家たちが駆使する技術を今後も学んでいきましょう。