2024.10




Mさんのgg。10月も抽象画を。モンドリアンのコンポジションとリヒターっぽい作画にトライしました。リヒターを4回作画しても良かったのですが、お腹いっぱいになるかなーと考えたので、一回目はモンドリアンのコンポジションの模写を。2、3回目はローラーやオイルパステルを使ってその使い方や、それらを使って形のないもの(たとえば今日食べたお昼ごはんや音楽といたもの)を表現するということにもチャレンジしてもらいました。

キャンバスをモデリングしておき、そこへ描画するということにもトライ。おそらくモデリング材として、モデリングペーストやジェルメディウムなどを通常使用すると思うのですが、あいにく普段アクリルをほとんど使わない私のアトリエに、それらのメディウムがなかったので、古典的?な石膏を使いました。

4回の受講全てを使って、リヒターっぽい表現の獲得を目指すのも良かったかもしれませんが、自分の意図としては、せっかくリヒターを目指すのなら、一度さまざまな画材に触れて、それぞれがどのような効果をもって現れるのか、を知っておいて欲しかった。それが今回さまざまな要素を取り入れた大きな要因です。
モンドリアンでは平筆の扱い方や、マスキングテープを使った時の、絵の具の濃度や筆さばき、画面を均一に塗るコツなどの習得を。
ローラーを使用した回では、かすれた表現や、ローラーに付いた絵の具によって反復される色を、どのように活用できるか?や、自手で描いた時とローラーで滑らせたときの表情の違いを味わうことなど、’画材によって現れる現象の相違’に着目していただきたかった。

でも、もしかしたらうまくMさんへ伝わっていなかったかなと少し反省。自分が何のために今この作業をしているのか?を知りながら学習することで、行為に納得して取り組めますもんね。また次回からここの部分を吟味しながら、お伝えしていこうと私も勉強になりました。

そんなこんなで迎えた4回目。ようやくリヒターっぽい作画の本番です。
カラフルな下地を目指して、最初は筆やナイフや定規を使っておもむろに手を動かしました。
やっぱりこういう作業は理屈抜きに楽しいですよね。直感的に色を選んで手を動かして。リヒターの画集をそばにおきながら、時々、どうしたらこういう表現ができるのか?を模索しながら、でもあまり堅苦しく考えず、話をしながら3枚の絵が完成しました。Mさんどう感じられたかな…?

抽象画を描くという行為には、自分が狙っている効果以外の場所から、思いがけず心地よい感じの表現が、突如として見えてくることもたくさんあります。それらは流れる雲のようだったり、うつろいゆく水面のようだったり。キャンバスの中に自分の意図しない現象が現れた時が自分の感性や価値観に気付くチャンスであると、私は考えています。「なぜその色を残したのか、なぜその表現を上書きして消したのか」。往々にしてこの作業は無意識で、無自覚に行われていることの方が多いかもしれません。制作に没入すると、いちいち自分の挙動を言語化しないですから。でもそこで少しだけ自分の心に自分で問うのです。「なぜ今私はこれを選んだの?」と。絵を描いている最中にその問いかけの答えは見つからないかもしれません。けれど、何気ない瞬間に、忘れていたその問いの答えが、心に浮かび上がることがあります。その答えをひとつひとつ集めていった先に、自分の感性のかたちが観れたり、自分の価値観に触れることができるのではないかと、私は考えています。そうして集めた自分の欠片が、作画に少しづつ現れてくる。そしてそれを継続すればするほど、自分と絵がどんどん繋がって、もっともっと面白くなる。

11月は我らがピカソです。私も大好きな巨匠。楽しんでいきましょう。