202409-2




9月のゴッホ後半。一度完成させたこの「夜のカフェテラス」。今度は、鉛筆でトレースし、薄く着色したのちに描画を行う手順で再スタート。将来、ご自分でアートワークショップを展開するにあたり、2時間でこのゴッホの絵を完成するためには、どこまで下書きをし、どのように進めていくかの考察が必要です。初心者の方がF4サイズを2時間で完成させるには、やはりある程度までの下書きを事前準備として行い、スタート時点で参加者がゴールをイメージできるようお膳立てをしておくことも、模写する作家によっては必要かもしれませんね。

ということで、お手持ちのこの絵のトレースを鉛筆を用いて行いました。やり方は至って簡単。コピーした絵の裏面を濃い鉛筆で塗りつぶし、キャンバスに表をむけて平置きにして、上からなぞるという古典的な方法。今回はトレースの画材を鉛筆にしましたが、本作の素材によっては、オイルパステルや色鉛筆でも代用できます。鉛筆でA4紙いっぱいを塗り、トレースをし終えるまで1時間ほど。Mさんはもちろんこのトレース作業も初めてですから「どの線をどこまで精密に移せばいいか」を考えながらの作業です。「自分が次にこの線を頼りに絵を描くことを想像しながら、トレースしていきましょう」と私は伝えるのですが、それも初めてだと難しいですよね。結果、ひとまず全ての線をそのまま写しました。そして、薄めたイエローオーカーを上からひと塗り。ドライヤーで乾燥させた後に、いよいよ描画に入ります。

「一番最初にどこから描き始めますか?」という問いに「左の黄色い壁面から」と答えたMさん。この画面の一番綺麗で注目が集まる黄色。そして、手前にある黄色。それを一番最初に描きたくなる気持ち、わかります!が、ここは描きたい気持ちをグッと抑えて、先ずは、画面の遠近を作り出すことが必至。遠近感を作るときに一番手前にあるものは、一番最後。コントラスト良く鮮明に描くことでグッと前に出てくるので、初心者の方は、先ずは一番奥の空間から色をのせるのが無難でしょう。この絵の中で一番奥は夜空の青。次にシルエットが浮かび上がる右側の建物、そしてビルが夜に溶け込んでいくテラスの二階部分。この部分を下書きの線を元に、色による遠近法も用いつつ、模写してゴッホ三日目が終了しました。四日目の最終日、前回途中だった画面は、完成はしていないものの、とてもいい雰囲気で絵が進んでいました。丁寧に追っているのがとてもよく分かります。最初の模写と比べると、しっとりとした観察が手に取るように分かり、格段に絵画に近づいています。ここまでいい感じに進んでいるので、このまま焦ることなく丁寧に制作を続行し、完成させてほしいですね。

今回のゴッホでは、一点透視図法というパースが用いられていました。一言でパースの描き方を説明するのはかなり難しいので、描き方はこの一年かけてその都度伝えていくとして。今日は、立方体を色分けすることで簡単に立体的に見えるデッサンの基礎的な実践法を説明しました。すると、20分ほどで立方体が二つ重なったデッサンが描けたMさん。ちょうど部屋を通った奥様もびっくり。質感や量感など、自然界にあるものをそのままデッサンしようとするのは難しいと感じてしまいがちですが、まずこの立方体のデッサンを体得することで、陰影の原則が身につき、パースが身につき、次第にモノの質感や量感まで描けるようになります。光源の向きをしっかり定め、モチーフを単純な立方体に見立て、先ずは大きく、光のあたっている一番明るい面、次に明るい面、そして一番暗い面を色分けする。これを継続して描いていけば、きっと近いうちにすんなりと理解できることと思います。
上手く気分転換しながら、続けていきましょう!