Sちゃんのgg。前回下描きを終えた画面に今日は着彩を施しました。最初に挨拶程度に言葉を交わして以来、後は互いの制作へそれぞれが集中していたのですが、ふと顔を上げてSちゃんの絵を見てみると前回の下描きの、背面からのぞんだ裸婦のデッサンが消えていて、人の顔のアップが描かれていました。この色彩の妙味。今までポップで発色の良い画面構成を得意としていたSちゃんでしたが、この落ち着いて深みのある色彩に、また違った美しさを感じました。画面下にチラリと見える青が効いてるなあと思いつつ、「かっこいいね」とSちゃんに声をかけると、背景を迷ってるんですという応えが返ってきました。「自分がすでに描ける顔の描写はいつもこの程度は描ける。けれど背景に及んだとき全然描けないんです。イメージはあるのだけれど、その通りに描けないジレンマで、いつも色面で構成して終わってしまう。本当はもっと違うものを描きたいんですけどね…」と。なるほど…。ちょうど図書館からクリムトの画集を借りていたので、それを見ながらSちゃんと少し話しをしました。デッサン力と一声でくくってしまえばそれまでですが、画家たちの歴史をひもといてみても、例えば名画の模写をしたり基本となるデッサンを度重ねることで、画面構成や空間設定などの描写力を養ってきたのではないかと思うのです。Sちゃんのこの問いかけは、全く私自身にも降りかかっている課題なので他人事ではありません。物資豊かな現代に生きている環境を怠惰に眺めず、理想へ向かって切磋琢磨するほかないのかもしれません。それが画家の喜びであることに感謝しながら。